ガンや奇形の誘発物質である-有機塩素化合物(OCC)の環境中での挙動や運命を知る上で基本的に必要な塩素同位体効果に関する理論的・実験的研究を進めるために、陰イオン交換濃縮法、同位体分析法、超臨界水分解法、について研究を進めてきている。平成12年度の研究成果は以下の通りである。 (1)陰イオン交換樹脂による塩素濃縮実験: 微少量塩素の濃縮を陰イオン交換濃縮法により行った。希薄溶液中塩素イオンは強塩基性陰イオン交換樹脂に取り込まれ、必要最小限量の希硝酸溶液で樹脂中から定量的に洗浄回収できることを確認した。このことは硝酸イオンは塩素イオンに比べ陰イオン交換樹脂に対する親和性が高く、プロトンに比べてそれが低いので、塩素イオン遊離溶液として最適であることが分かった。また陰イオン交換に伴う塩素同位体分別効果については、回収率が低下した場合には深刻な同位体比変動を生じることを本研究が初めて確認した。 (2)極微少量同位体分析実験: 現行の塩素安定同位体分析精度を維持しながら微少量塩素量の分析を実現するために分析試料ガスを液体窒素中での濃縮法を検討した。その結果、分析計に導入する塩素量を従来の20分の1(塩素重量として95microgram)とする事ができた。 (3)超臨界水によるOCC分解実験のための実験設備準備並びに準備実験: 有機化合物分解に資する超臨界水実験装置を作製した。装置は、圧力センサー・ラプチャーディスクを装備したインコネル製高圧セル本体と、温度制御機能付き箱型電気炉とから構成されている。現在までに、メタノール及び超純水について超臨界状態を実現した。今後、有機溶媒分解の最適条件、即ち有機溶媒と酸化剤の混合割合などを検討する。また各種有機溶媒(トリクロロエチレン、トリクロロエタン、パラクロロエチレンなど)について分解実験を行う。
|