ガンや奇形の誘発物質である有機塩素化合物(OCC)の環境中での挙動や運命を知る上で基本的に必要な塩素同位体効果に関する理論的・実験的研究を進めるために、陰イオン交換法、同位体分析法、超臨界水分解法、について研究を進めてきている。平成13年度の研究成果は以下の通りである。 (1)有機塩素化合物の環境中挙動と塩素同位体効果 陰イオン交換樹脂を用いたクロマト法による塩素同位体分離実験から、水溶液中における塩素同位体効果の程度を測定し、分離係数として1.00030±0.00006(1σ)(25度)を得た。この結果は固液系において軽い塩素同位体(35Cl)が固相中に濃縮する傾向があることを示し、塩化物イオンが水和構造で安定である事を意味した。分離係数が精度良く得られたことにより、各種OCCの環境中における分解・合成過程を通じた挙動や運命を理論的に把握する研究に貢献できる。 (2)超臨界水による有機化合物分解 超臨界水実験装置(インコネル製高圧セル本体と箱型電気炉とから構成されている)を用いて、試験的に市販の各種有機化合物(メタノール、エタノール)について加水分解実験を、反応炉内温度400度、圧力30〜40MPaの実験条件で行った。反応時間は昇温時間の約30分を含めて計約1時間であった。反応終了後、反応液中の残存アルコール量をGCで定量した結果、検出限界以下であり、超臨界条件下で分解したと考えられる。現在、ポリ塩化ビニルやPCBなどについてアルカリ添加超臨界水分解により塩素の定量的回収実験を実施中である。
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