2年間にわたり、千葉県印旛沼水系の湧水の硝酸イオンを中心とした化学成分含量を求めた。湧水周辺の環境(涵養域)を調査し、窒素の起源と湧出環境との関連について考察した。本研究で明らかになった点は次の通りである。 1)2年間を通じて硝酸態窒素濃度の最高値は61.7ppm(試料番号311、富里町立沢、2000年6月採水)であった。調査した湧水の約半数(48%)の硝酸態窒素濃度が、水道基準値の約10ppmを超えており、印旛沼水系の湧水の硝酸態窒素汚染の実体が明らかになった。 2)硝酸イオンが比較的高濃度を示した湧水について、窒素安定同位体比(δ^<15>N)を測定した。湧水湧出地点の環境等からδ^<15>N値として、生活排水起源、化学肥料起源、有機肥料起源(畜産排水を含む)の三つの汚染源別にそれぞれ、8.49‰、1.85‰、3.45‰の平均値が得られた。 3)δ^<15>N値を用いて、比較的涵養域の特定が容易であった2け所(201と311)の湧水について、窒素の起源と涵養域との関連について考察した。前者では、窒素の起源は主として生活排水、後者については化学肥料と有機肥料であると結論できた。 4)印旛沼水系、とくに畑地付近の湧水中の硝酸態窒素濃度に大きな影響を及ぼす因子として、施肥量が上げられることがわかった。施肥と湧水(地下水)の窒素汚染の関係は、さらに解明されなければならない検討課題の一つである。
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