生成のメカニズムについて、COSはThiobacillus thioparusがチオシアン酸塩を原料として生成され、DMSは海水硫酸塩を原料として多種のDMS発生藻類によって生成されると言われているが、これらの原料はすべて無機塩類である。例えば有機硫黄化合物が土壌或いは海洋に流入した場合、これらを原料としてCOSやDMSが生成しないのかという問題が生じた。この解明に、培地に各種硫黄化合物を添加して、実験室的に微生物の培養を行い、発生したCOSおよびDMSの硫黄同位体比からその原料となっている硫黄化合物を特定しようと試みた。しかし、DMSを発生する藻類は数多く知られているが、実験室的に安定して生育する種を見つけるのに多くの時間を費やし、研究期間内に上記の目的を達成するには至らなかった。その後Cricosphaera roscoffensis NIES8およびAlexandrium catenella NIES677の生育に成功し、現在、硫黄同位体比測定に供する程度のDMSの捕集が完了している。一方COSは実験室的な培養に成功し、原料のチオシアン酸カリウムの硫黄が微生物の作用により同位体分別を起こしてδ^<34>S値を下げていることが確認された。しかし、培地に有機硫黄化合物(イソチアン酸アリル)を添加した実験については、Thiobacillus thioparusが生育しなかった。 またCOSおよびDMSの環境における挙動を調べるためには、土壌表面からCOS、海洋表面からDMSを捕集してそれらの硫黄同位体比を測定しておく必要があるが、特にDMSは不安定なため、本研究では捕集方法の検討を詳細に行った。
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