1.京都市の桂川河川敷と桂西口住宅地において、チョウのトランセクト調査を行い、河川敷と住宅街の環境を、チョウ類群集により判別できる可能性を示した。また、桂西口住宅街では、本研究開始以前から継続していた調査とあわせて5年間の継続調査を行い、チョウ類群集の年間変動の要因と程度についての情報を獲得し、単年度調査の限界について考察した。 2.神戸市北区の里山を含む保養地である「しあわせの村」において、チョウのトランセクト調査を3年間継続して行い、同地の里山環境の保全状況を検討した。近接地域における既存調査との比較において、当地の里山環境は比較的維持できていると判断できたが、年次変化の検討では里山環境の衰退が認められた。 3.東京都武蔵野地域の2つの都市公園において、チョウのトランセクト調査を行った。オープンランドを主体にした小金井公園には都市緑地の優占種が優勢であるのに対して、二次林を自然観察園の形式で取り込んでいる野川公園では里山に特徴的な、アカシジミ、樹液依存性のタテハ類、ササ食のジャノメチョウ科の種、セセリチョウ科の種が優勢であり、チョウ類群集に大きな違いを認めた。このことから、チョウ類群集による都市環境評価は西日本地域だけではなく、首都圏においても可能と判断した。また、里山環境の維持において、自然観察園方式はすぐれた方法であると考えられた。 4.東京都心の非公開緑地である宮内庁管轄の赤坂御用地において、チョウ類群集のトランセクト調査を行う機会が得られ、実行した。その結果、皇居には及ばないものの、御用地内には、公開緑地にはない自然環境が維持されていることが判明した。 5.各調査を総合的に考察し、都市環境に特徴的なチョウの種を複数同定し、その占有率が環境の都市化の指標になると結論した。
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