研究概要 |
琵琶湖北湖の4地点で長さ約40cmの柱状堆積物試料を採取した。また,その内の1地点については季節を変えて採泥を行った。γ線スペクトロメトリーによる^<210>Pb法で堆積物の堆積速度と堆積年代を推定した。測定の完了した3地点の堆積速度は堆積物表層でそれぞれ0.196,0.290,0.446cm/yrと推定された。^<210>Pbの鉛直分布から,試料によっては堆積層の途中に混合層を挟むものが認められたが,それを考慮すれば,これらのコアについて堆積年代を同定することができた。 推定した堆積年代を評価するために,^<137>Cs及び水銀をマーカーとして用いた。^<137>Csは第二次大戦後の大気圏内核実験によって地球に負荷され,わが国では1963年にフォールアウトのピークがある。一方,水銀はその生産量のピークが1944年と1960年にある。これら物質の堆積物中での鉛直分布は,^<137>Csの場合には深さ5-10cm以浅(堆積年代は1950年以降)で検出され,明瞭なピークを示した後,表層に向かって濃度は低下した。水銀についても^<137>Csとほぼ同様な鉛直分布を示した。このような分布は,これら物質について予想される環境への負荷の歴史トレンドとよく一致していた。また,詳しく観察すると,これらの物質が周辺域に負荷され,雨水等により輸送されて琵琶湖に搬入し,堆積物に除掃,沈積するまでに数年のタイムラグがあることも観察された。 堆積物に記録されたこれらの時系列情報を利用することで,重金属元素やダイオキシン類などによる環境汚染の歴史トレンドを解析することが可能となった。
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