研究概要 |
琵琶湖の北湖,南湖で採取した柱状堆積物試料25本について主成分,微量成分の22元素を定量した.その分析結果から琵琶湖堆積物の化学的特徴と堆積物質の起源,琵琶湖内における動態について考察した.更に,^<210>Pb法,^<137>Cs法で堆積年代の推定が可能であった北湖のコア4本について,そこに記録されている環境変遷の歴史トレンド解析を行った. 堆積物中の主成分元素の分布を用いたクラスター分析から,琵琶湖堆積物は大きく5つのクラスターに分かれることが判明した.即ち,北湖北部,北湖南部,南湖北部,南湖南部及び赤野井湾である.この中で北湖北部と赤野井湾は琵琶湖の他の地点とは相関関係が低く,その組成は特異的であると考えられた.琵琶湖北湖の堆積物では銅,亜鉛,鉛,水銀の汚染が認められた.その内,亜鉛,鉛,水銀については第二次大戦後の高度経済成長期における汚染が顕著であり,これら元素の生産量の歴史トレンドと汚染の履歴はよく一致した.また,琵琶湖堆積物に蓄積している水銀は1950〜60年代に周辺の田圃に大量に散布された水銀系農薬を起源としていることも明らかになった.銅はこれら重金属と異なり,1920年代から琵琶湖堆積物への汚染が始まるが,その起源を特定することはできなかった.本研究における堆積年代の妥当性を評価するために,堆積物中の^<137>Csの分布とその大気からのフォールアウトの時系列を比較,検討したが,それらの歴史トレンドは極めてよく一致した.
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