研究概要 |
河川水をSepPacで濃縮し、エストロジェンレセプターαと蛍光色素をラベルした17βエストラジオール(ES-1)の結合物を含んだ溶液に添加し、両者の結合阻害を蛍光偏光度の変化で測定し、河川水に含まれる、女性ホルモレン様化学物質の総体を定量した。木曽川、長良川、損斐川の源流では、そわぞれ0.024、0.15、1.3μM(ES-1相当)であるのに対し、河口部ではそれぞれ289、61、2,123μMといずれも河口部へ向かうほど濃度が高かった。しかし、長良川のみは、河口よ34km地点濃度が13,500μMと最も高く、ここから河口部に向かって減少傾向を示した。これは、この地点へ都市排水が注がれるからと考えられた。 女性ホルモン様作用を有する化学物質の1つとして、免疫法によって測定できるビスフェノールAいついても定量した。長良川の15km地点で最も濃度が高く、54.0ng/mlを記録した。上流の郡上郡でも17.5ng/mlを記録していることから、生活排水には多くのビスフェノールAが含まれると考えられる。この物質が上記の反応の一部に関与しているものと考えらねた。 長良川の38km地点で川漁師が捕獲したコイと、上流の郡上郡で長良川支流の吉田川の流水を使って養殖されたコイのオス血清中のビテロジェニンの定量を免疫法によって行った。下流の同値は157.0±20.3ng/ml、上流の同値は122.5±7.0ng/mlで、有意に(p<0.005)下流の雄コイの同値が高かった。従って、長良川下流の野生動物は、女性ホルモン様化学物質の影響を受けている可能姓が示唆された。
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