本研究では、河川水に含まれる女性ホルモンレセプター結合性物質を蛍光偏光原理を応用したBeacon【○!R】で測定し、魚類への影響を雄血中ビテロジェニン濃度によって明らかにした。その結果、1)木曽三川では、下流部に多く、女性ホルモンレセプター結合性物質が検出できた。淀川下流においても同程度であることから、全国の河川においても同様の状況と推察できる。2)汚染源は、都市生活排水等が処理放流される支流であることが明瞭になった3)川に棲む雄コイの女性化や、川の水で飼育した雄メダカの女性化は傾向としてあるものの、有意ではなかった。4)河口〜沿岸に生息する雄ハゼでは全く女性化が認められなかった。さらに、具体的な化学物質についても調査し、以下の点を明らかにできた。5)汚染の一因となるビスフェノールAは長良川下流部で高い値が記録された。6)沿岸〜河川に生息する食用の魚介類のダイオキシン類は、1〜2種に若干量認められる程度で、他地域の調査に比較し小さな値であった。 以上から、ホルモン様物質による河川〜海域の汚染は、人間生活の副産物によるものであり、下流ほど強くなるが、海域では希釈されている(ダイオキシンは一部魚類に濃縮)。これが、現在の木曽三川と伊勢湾沿岸の歴史的状況である。逆に、今後の監視を弛めるわけにはいかない状況とも言い換えることができる。さらに、こうしたホルモン様物質の人体や野生動物への影響を明瞭にしてゆく必要がある。
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