研究概要 |
1.ミトコンドリアの活性酸素産生量に及ぼすメチル水銀、無機水銀のin vitro曝露の影響 ラットの大脳と小脳を摘出しミトコンドリアの膜分画標品(SMP)を調製した。SMPを種々の濃度の塩化メチル水銀(MeHgCl)と塩化第二水銀(HgCl_2)に曝露後、MCLA-化学発光方でO_2^-産生量を測定した。その結果、NADHを基質とした時のO_2^-生成量は大脳、小脳ともにHgC1_2では約5×10^<-7>Mで増加しはじめ水銀濃度依存的に増加し50×10^<-7>Mでピークが認められた。一方、MeHgClによるO_2^-量は約5×10^<-6>Mで増加したが、水銀濃度依存的な増加は認められず、その増加量はHgCl_2に比較して約4分の1程度であった。コハク酸基質では、有意なO_2^-産生増加は認められなかった。このように、SPMのO_2^-産生量はメチル水銀曝露に比較して無機水銀曝露での増加が大きいことが明らかとなった。 2.メチル水銀投与ラットのミトコンドリア活性酸素産生能の検討 ラットにMeHgCl(10mg/kg/day,5 days)を経口的に投与し、投与終了後1、7、14日目に大脳、小脳を摘出し、SPMのO_2^-産生量、上清中のチトクロームc量、細胞分画後の総水銀、無機水銀量を測定した。その結果、NADHを基質とした時のO_2^-産生量はメチル水銀曝露によって小脳では7、14日目に増加した、大脳では14日目のみ増加した。また、上清へのチトクロームCの遊離量は小脳で7、14日目に有意に増加したが、大脳では増加しなかった。これらの脳の細胞分画における無機水銀量は小脳のミトコンドリアにおいて最も多かった。これの結果から、脳内で生じた無機水銀は活性酸素産生の増加を介したアポトーシスに少なくとも部分的には関与している可能性が示唆された。
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