研究概要 |
平成12年度は、主としてラットを用いたin vivoのフッ素化脂肪酸(PFCA)の動態解析を行った。炭素鎖長7〜10のPFCAを静脈内に投与して、尿中ヘの排泄速度と血中濃度を経時的に測定することによって腎クリアランス値を求めたところ、炭素鎖長の短い化合物ほど高い腎クリアランス値を示す傾向があることが明かとなった。胆汁中への排泄速度にはPFCA間で大きな差が認められなかった。炭素鎖長の短い化合物では尿中ヘの排泄に比べて胆汁への排泄は非常に遅いのに対し、炭素鎖長の長い化合物では尿中ヘの排泄が遅いために胆汁への排泄は主要な排泄経路であることが判明した。さらに、PFCAの腎クリアランス値には顕著な性差が認められ、特に炭素鎖長8および9のPFCAでは20から70倍と大きく異なっていることが判明した。次に、消化管からのペルフルオロオクタン酸(炭素数8、PFOA)の吸収率を検討したところ、経口投与後2時間で投与量の約60%と、非常に高い効率で吸収されることが明かとなった。そこで次に、反転腸管を用いてPFCAの取りこみを検討したところ、PFCAは濃度および温度依存的に腸管の内部に取りこまれた。さらに、腸管刷子縁膜ベシクルを調製して、PFOAの取りこみの諸性質を検討したところ、PFOAはNa^+,HCO_3^-,H^+などを必要とせず、また、酸性に至適pHをもつ何らかのトランスポーターによって取りこまれていることが明かとなった。次年度以降は、培養細胞に種々の既存のトランスポーターを発現させ、PFCAの輸送に関わる分子を明かにしていくとともに、細胞内オルガネラにおけるPFCAの局在などについて明かにしていく予定である。
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