研究概要 |
土壌汚染が土壌動物にどのような生態的リスクを与えるのか,本研究において下記のような成果が得られたので報告する. 1)主にヨーロッパを中心に土壌汚染研究に用いられているトビムシ種を概説し,さらに,この分野での研究がおくれている日本において,すでに飼育系が確立されており土壌汚染研究に使用可能なトビムシ種について考察した. 2)環境要因がトビムシの成長に与える影響を評価する手法を蘭発するために,デジタルマイクロスコープを用いて体長を測定する方法を検討した.艀化直後から産卵開始時までが有効であった. 3)日本産Folsomia candidaに対する汚染物質(塩化銅二水和物,LAS)の影響について,日本初の人工土壌(OECD)を用いた慢性毒性試験を行った。土壌中の汚染物質濃度が高くなると,生存率は低下し,成長量が減少する傾向が見られた.また,汚染土壌中で飼育した親個体め産卵により艀化した幼若個体数が減少し,生殖への影響が考えられた. 4)土壌へのグルコース添加と含水率の操作がトビムシの成長に与える影響を調べた結果,土壌含水率が高く,生物群の活性が高い土壌において,成長が促進された. 5)土壌汚染がどのような生態リスクを土壌動物にもたらすのかを解析する方法についての研究レビューを行った.今後は土肇生態系のリスク評価ができるようにシステムレベルでの試験方法を確立し,日本産土壌動物の基礎データの蓄積が重要である.
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