研究概要 |
1998年1月から1999年8月にかけて三重県四日市市,愛知県碧南市及び神奈川県川崎市を中心とした3工業地域において採取した土砂試料について変異原性と含まれるdinitropy rene (DNP)量を調べた.試料は自然乾燥後,篩にかけて粗大ゴミや小石などを除去した後,250μm以下の土砂15gについてメタノール(200ml)で2回超音波抽出した.抽出液はろ過後,溶媒を留去して得た残渣をジメチルスルホキシドに溶解し,サルモネラ菌TA98株及びTA100株に対する変異原性をS9 mix存在下及び非存在下で試験した.土砂抽出物中の1,3-,1,6-及び1,8-DNPはシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりクリーンアップ後,白金/ロジウム還元カラムを用いた蛍光-HPLC法により分析した. 試験した27検体のほぼ全てがTA98株に対しS9 mix添加の有無にかかわらず変異原性を示した.碧南市においては土砂1g当たり13,000 revertantsと極めて強い変異原性を示す地点が見られ,その活性はS9 mix非存在下で高かった.川崎市を中心とした京浜地域より採取した試料はS9 mix存在下でTA98株に対して強い変異原性を示すものが多く,表層土壌中の主な変異原物質が地域により異なると考えられた.一方,TA100株に対しては殆どすべての試料がS9 mix存在下において変異原性を示した.碧南市,半田市及び高浜市の土壌抽出物中からDNP類は検出され,碧南市においては土砂1g当たり1,3-DNP 3.3ng,1,6-DNP 5.6ng,1,8-DNP 6.8ngの地点もみられ,S9 mix非存在下における変異原性の約20%はDNP類によるものであった.
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