研究課題/領域番号 |
12680556
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助手 (10132482)
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研究分担者 |
福永 浩司 熊本大学, 医学部, 助教授 (90136721)
夏目 季代久 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助教授 (30231492)
保利 一 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (70140902)
福田 孝一 九州大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (50253414)
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キーワード | 1-ブロモプロパン / 中枢神経毒性 / 脳スライス標本 / GABA抑制 / LTP / 免疫組織化学 / 細胞内シグナル伝達 |
研究概要 |
1-ブロモプロパン(以下1-BP)は、洗浄溶剤として大量に使用されている。最近、1-BPを主な溶剤として使用したアメリカと中国の労働者が、中枢神経症状を含む中毒症状を訴えていることが報告されてきた。しかし、1-BPの中枢神経障害は報告がきわめて少ない。我々は、1-BP(1500ppm、4週間)の吸入曝露による早期の神経回路機能障害が抑制の減弱であることを報告した(Fueta et al.,J Occup health,2000)。さらに、1-BP濃度を700ppmに下げて、長期12週間曝露し、その後4週間のクリアランスを行った。中枢神経系への毒性は、曝露されたラットの海馬を用いて電気生理学的・免疫組織化学的・神経生化学的手法により総合的に検討された。その結果、神経毒性として、GABA系抑制機能の減弱、NMDA型グルタミン酸受容体の過剰な活性化、および長期増強(LTP)の減弱をみとめた。また、活性化型CaMキナーゼII、シナプシン1の発現量に変動がみられた。いっぽう、GABA系関連蛋白の分布およびGABAインターニューロンの定量的細胞密度解析結果には差が認められなかった。1-BP曝露による過剰興奮は、曝露停止によって対照群レベルにもどった。これらの結果から、1-BPの神経回路機能障害は、関連機能分子の分布や細胞形態に影響しにくいもので、それゆえに、可逆的であり、回復したと考える。実験結果は、曝露初期の段階から中枢神経機能変化が細胞レベルで起こりうることを明示しており、神経毒性評価指標として、脳スライス法は、産業化学物質慢性曝露の健康への影響を評価するうえで有用であることが示された。
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