環境化学物質に由来する神経発生毒性を簡易に評価しうる系の開発を目指して、一次スクリーニング系としては、ヒト神経芽細胞腫NB-1細胞における神経突起伸展と成長円錐に濃縮されている蛋白質(440kD ankyrin_B等)の発現を指標とした影響評価系を、二次スクリーニング系としては、より実際の神経組織に近い小脳スライスを用いた器官培養系における神経細胞の移動を指標とした評価系を確立することを目的とする。両評価系を併せ用いることにより、特に発生段階の脳神経系に対する環境化学物質の影響評価を試みている。 今年度は、まずNB-1細胞における神経突起伸展を評価するための画像解析システムを確立した。位相差顕微鏡、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、画像解析ソフトウエア(NIH Image)からなる神経突起画像解析システムを構築した。ただ操作の大部分が手作業であり、多大なる労力と時間を必要とするため、さらに簡便化と半自動化を試みている。次に、440kD ankyrin_B等マーカー蛋白質の化学発光を利用した簡易イムノアッセイ系を確立した。ドットブロット法を改良して定量性簡便性を向上させ、更に化学発光を利用して高感度化をはかって、簡易なイムノアッセイ系が確立された。神経突起伸展を抑制あるいは促進することが明らかにされているメチル水銀とdibutyryl cAMPを用いて両試験系の性能評価を行ったところ、神経突起伸展度と440kD ankyrin_B発現量の間にが認められることが明らかになった。
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