研究概要 |
1.屋敷林の群落学的・種多様性の分析 岩手県胆沢扇状地に分布する屋敷林の詳細なフロラリストを作成し,植生調査と森林構造調査を行った。その結果,残存型の屋敷林にはスギ植林型,コナラ優占型,アカマツ優占型,ハンノキ優占型の4タイプがあり,その成立には微地形や人との係わりに大きな相違がみられた。また,コナラ優占型の林分を扇状地外の林分と比較した結果,林冠を構成する種が多く,有用木や鳥散布植物が多種含まれた。さらに林縁を境に林の内外で草本植生は激変し,陽生・鳥散布植物の低木やつる植物,先駆種が優占することなど,林縁の存在が種多様性に大きな役割を果たしていることが示唆された。 2.GISデータベースの構築 胆沢扇状地の中央部に南北10km,東西1kmのモデル地域を設定し,現地踏査と空中写真の判読,地図資料などからデータベースを構築した。それらから,地形に応じた土地利用や土地改良の歴史,屋敷林の空間的配置などを解析し,地域ごとの特性を総合的に把握した。 3.埋土種子の分析 屋敷林に侵入する植物を林床に蓄積する埋土種子から,.まきだし法を用いて分析した。その結果,25試料から85種,12830個体を抽出した。これらには耕地雑草,先駆樹種(アカマツ,タラノキなど)などが高頻度,多種,多個体が確認され,さらにケヤキ,ニガキなどの高木も検出された。これらは林床に生育する植物とは異なる種組成を持っていた。 4.屋敷林における動物相の研究 数力所の屋敷林で,そこを利用する鳥類,節足動物を季節を通して観察した。鳥類は二次林にくらべ屋敷林では出現種数や種多様性が低く,開放的な場所を好む鳥類が多かったが,冬季の利用度が高かった。一方,地表生節足動物は屋敷林によって異なる種組成からなり,場所による固有性が高く,屋敷林の孤立性が示唆された。
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