研究概要 |
1.屋敷林・孤立林の群落学的・種多様性の分析 岩手県胆沢扇状地に分布する屋敷林で詳細なフロラリストを作成し,植生調査と森林構造調査を行った。その結果,中〜大規模な屋敷林に出現する高等植物は85〜147種で,面積と出現種数との間に正の相関が認められた。これは面積の増加とともに林縁部が増加したためで,それ以外にも有用木や先駆植物,鳥散布植物耕作地雑草,山野草などが多種含まれていた。また,屋敷林を含めた扇状地内の孤立林の植生を調査した結果,アカマツ植林,コナラ林,スギ植林,ハンノキ林が抽出され,屋敷林はこれらのうちで最も種多様性が高いことが確認された。 2.GISによる屋敷林の解析とWebGISの開発 胆沢扇状地全域において1968年と1995年の空中写真を用い,屋敷林の点数や面積をGISを使用して計測した。その結果,屋敷林の面積は減少傾向にあり,水田や道路の改良工事に基づく屋敷面積の減少と,屋敷の細分化が進行していることが確認できた。これらの結果や屋敷林の分布,主な構成樹種,高さや規模などをデータベース化し,Web上で検索,利用できるようなオープンなシステムを構築した。 3.屋敷林を利用する鳥類相 屋敷林を利用する鳥類を把握するために,1年を通してセンサスを行い,周囲の二次林と比較した。その結果,屋敷林では22料34種,二次林では13科29種を確認した。これらのうち,二次林ではキツツキ科などが特有に出現し,屋敷林ではムクドリなどの18種が特有に,繁殖する種も含まれた。しかし,屋敷林の規模や林分構造などの違いによって鳥類相は大きく異なっていた。
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