研究概要 |
現在、ダイオキシン、単環・多環芳香族化合物、フタール酸エステルやノニルフェノール等の芳香族化合物による土壌汚染が問題となっている。汚染土壌の浄化技術として微生物を用いた浄化が期待されているが、微生物浄化の際にはCO_2まで無機化するのは約60%程度で、残りの殆どは分解に伴って化学構造不明の物質へと変化することを、本研究代表者は明らかにした。農薬分解の際にも同様の残留物が観察され「抱合体」と呼ばれているが、その化学構造や生成過程等は殆ど明らかになっていない。そこで本研究では、第一に、土壌の抱合体生成反応の追跡法を開発することを目的とし、第二に分解に関与する主要微生物群と抱合体生成反応との関係、すなわち抱合体生成過程を明らかにすることを目的とした。 これまでに開発してきた^<14>C標識キノンによる分解微生物群検出法を用い、フェノールを対象化合物として、分解に関わる主要微生物群を明らかにした。名大農場慣行区土壌に[U-^<14>C]標識フェノールを添加し(404μg/g-dry soil)、畑水分条件(pF=1.8)下28℃で5日間培養した。添加方法は(1)液体状で添加(2)風乾土に吸着させて添加の2種類、加えて培養条件は(3)蒸留水で水深1mmに湛水し静置(好気的)、(4)懸濁状態として3日間振盪の計4種類とした。培養後、各土壌試料のキノンプロファイルをHPLCで測定し微生物群集構造を推定した。HPLC溶出液を分取し各画分の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定して^<14>Cキノンプロファイルを求め、資化性菌群を推定した。 主要キノン種は(1)MK-8,MK-8(H4),MK-9(H8)(2)MK-8,MK-8(H4),MK-9(H8),MK-7(3)1,2連目はMK-8,Q-8,MK-8(H4)、3連目はQ-9,MK-8,MK-8(H4)(4)MK-8(H4),Q-9,MK-8が検出された。主要^<14>C標識キノン種は(1)1連目はQ-9、2連目はMK-10(2)Q-10(3)1連目はMK-8(H6),Q-8、2連目はQ-8,MK-6、3連目はQ-10(H2),MK-7(H4)(4)MK-7(H4)が検出された。添加方法(1)から(2)、培養条件(3)から(4)において土壌基質濃度が均一に近づいたことにより検出主要資化性菌群は変動し、菌群が統一されたと考えられた。畑水分条件と湛水条件では微生物相、主要資化性菌群ともに大きく異なる結果となった。異なる培養環境は微生物相だけでなく資化性菌群にも変動を与えることが示された。 今後は、^<14>C分布から抱合体の生成量を求めるとともに、その構造を^<13>C標識化合物を用いて抱合体を標識し^<13>C固体核磁気共鳴スヘクトルの測定を行うことによって、解析する予定である。
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