研究概要 |
来年度からPRTR法に基づく化学薬品の使用量と環境への移動量を報告する必要があることから,京都大学での化学薬品の使用実態と挙動調査を行い,大学におけるPRTR法への対応システムを模索した。薬品使用量(購入量)は,大学で統一したデータが存在しないことから,納入業者の納入実績を調査した。PRTR法の対象となる354物質の中で報告義務がある京都大学での年間使用量が1t以上の化学物質は,クロロホルム,ベンゼン,ジクロロメタン,トルエンの4物質であった。また,ホルムアルデヒドもホルマリンとしての使用量が多かった。 環境への移動量としては,水系への移動量として大学キャンパスからの排水,大気への移動量として有機廃液処理装置からの排ガス,廃棄物としての移動量として,有機廃液処理装置からの処理残渣と無機廃液処理装置からの廃液処理残渣を分析測定し,年間排出量を算出した。水系への移動量は,ホウ素が30kg/年程度で最大であり,使用量と比較してかなり少なかった。大気への移動量は,有機廃液処理装置の排ガスに由来する移動量は非常に小さかった。しかしながら,実験室内への実験時の揮散量やドラフトを通じての大気移動量は,現在の所,全く不明であった。廃棄物としての移動量(残渣に含まれて排出される化学物質の量)は,無機廃液処理残渣中のマンガン,銅などが多かったが,いずれも10kg/年以下であり,使用量と比較して少なかった。 さらに,薬品全体の物質収支を把握するためには,京都大学内での薬品処理量を把握する必要がある。無機廃液は性状及び処理量が把握できているため,推定が可能であったが,有機廃液については塩素濃度しか把握されておらず,その数字を用いて試算しても,購入量の半分程度しか説明できなかった。したがって,今後,実験終了後の廃液の性状を詳しく調査する必要があることが明らかとなった。
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