京都大学への薬品納入業者に対する納入量調査、研究室への薬品の使用実態に関するアンケート調査、有機廃液処理施設に搬入される廃液の分析調査、ドラフトでの揮散量調査など、京都大学における化学物質の利用実態を調べ、大学内の物質フローを把握した。 納入量調査を通じて、PRTR法の対象となる354物質のうち、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリルの5物質が京都大学内で年間1トン以上使用されていることが分かった。使用された後のこれらの化学薬品は、実験廃液として大学の有機廃液処理施設に搬入・処理されており、搬入される廃液について各化学物質濃度を測定した結果、薬品使用量の41%〜118%の量が処理されていることが確認された。なお排水として学外へ移動する量は使用量の1%以下であった。またビーカーに入れた有機溶媒をふたをしない状態でドラフト中に静置したところ、4時間で19%〜53%が揮散したことから、実験担当者へのヒアリング結果をふまえると、実験プロセスで使用する有機溶媒の10%程度が大気中に揮散していると推定された。化学物質の環境中への放出量を減らすために、実験プロセスにおける薬品の取扱方法や、廃液タンクの管理方法などを今後検討することが求められる。 またPRTR法の報告対象となる5物質について、使用量の多い上位10番目までの研究室を選ぶと、大学全体での使用量の55%〜88%を占めており、化学物質を大量に使用する研究室が限られていることが明らかとなった。このように特定の化学物質を大量に使用している研究室に対して重点的に環境安全面での管理を行うことにより、大学全体としてより望ましい環境管理の仕組みを構築できることが期待される。
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