研究概要 |
【目的】今日、エビや魚類の養殖には病気の治療と予防の目的で抗生物質が多量に使われている。内湾生態系の中でこれらの循環と濃縮過程を解明する目的で,海水と懸濁物に含まれる濃度,光(紫外線)や海水による消失特性及びプランクトンによる吸収特性を明らかにした。 【方法】2000年8月から10月にかけて,目の糞養殖場とグリンピア前養殖場で海水を,目の糞養殖場で沈降懸濁物を採取した。これらをその日のうちに濾過・冷凍しておき,後日解凍・濃縮して高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて濃度を測定した。また,陸上実験では光(紫外線)や海水による消失量,プランクトンによる吸収量を調べた。 【結果と考察】陸上実験:4w/m^2の紫外線照射下では,アンピシリン(ABPC)消失速度はほぼ一定であったが,テラマイシン(OTC)では濃度が1μM以下になると,消失速度が大きくなることが分かった。また,海水を用いて10μM溶液を作り水温27℃で放置すると,7時間で8%消失した。OTC(0.1mM)含有海水で培養したプランクトン(珪藻)は,1個体当たり1.32fg程度吸収することが分かった。海水中の抗生物質:ABPCは昨年と比べると採水日や水深によって差はあるが,同程度の濃度が検出された(最大1.4ppb)。一方,OTCは採水日に関係なくかなりの濃度で検出された(最大4.9ppb)。ABPC,OTCとも下層にいくほど濃度が低下した。これは,陸上実験の結果から,海水や紫外線による破壊やプランクトンの吸収を受けたと思われる。懸濁物中の抗生物質:懸濁物沈降量は平均3.15g_<wet>/day/m^2であった。この懸濁物中には湿重量1g当たり,ABPCで42μg,OTCで12μg含まれていた。 以上の結果:抗生物質は光(紫外線)や海水に破壊され,プランクトンに吸収されるが,その消失速度は種類や濃度によって異なることが分かった。しかし,多量の抗生物質を連続して与えれば,養殖場直下では分解されながらも一定濃度で溶存するものと思われる。
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