研究概要 |
(1)紫外線照射下では抗生物質濃度C(t)は指数関数C(t)=C_iexp(-αt)で表現される。tは時間で、消失速度αは初期濃度C_iに依存した。OTCは低濃度で消失しやすいが、AMP, OTCとも10mM以上では容易に分解しない。(2)底泥中の残留抗生物質は、湾内全域に広がっており、乾泥1g当たり、AMPで2-30μg、OTCで、0.05-0.35μg程度、湾央部養殖域ではそれぞれ、15-25μg、0.15-0.35μg程度と高濃度であった。底泥表面下0-5cm及び5-10cm層でも含有量に差は見られなかった。底泥層厚を10cmとして湾内全域の底泥に含まれる抗生物質量を概算すると、OTCで8ton、AMPで80kgとなった。(3)プランクトンはOTC含有培地でよく増殖し、かつ高濃度培地ほど増殖率は高かった。培養21日目の原生動物細胞中のOTC濃度は、OTC濃度10, 50, 100, 200μM含有培地で,それぞれ89.8, 12.4, 69.8, 128.9μM/cellと増加し、(10μM培地の結果を除き)高濃度培地ほど生物濃縮が進んでいた。この結果は、OTC濃度が高い前報の場合(100, 500, 1000, 2000μM)と同様の結果を得た。(4)海水中のAMP, OTC濃度は(St.Aでは)AMPで7月に最大0.56PPb、OTCでは8月にO.25ppb程度であり、昨年に比較しかなり減少していた。これは人工餌料の使用率が高まったため海水中への溶出が減少したことによる。(5)沈降懸濁物量は平均41.1g/day/m^2であった。濾過直後の懸濁物単位湿重量当たり、AMPで最大491μg/day/m^2(11月)、OTCで420μg/day/m^2(7月)であった。昨年の結果と比較して、海水中の含有量は減少したものの、懸濁物中ではあまり変化なかった。(6)ヴェトナムのエビ養殖池の海水中には、TP及びSMXがそれぞれ2ppm程度の高濃度で検出された。以上の結果、紫外線などによる分解の少ない抗生物質は海水や底泥中に多量に残留しており、プランクトンの増殖を促進し、かつ吸収・蓄積されることが分かった。
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