研究概要 |
近年,化学工場や金属関係工場跡地等の土壌の重金属汚染が問題となることが多い。また,化石燃料の燃焼灰や都市ゴミの焼却灰埋立地産業廃棄物処理施設からの浸出水による土壌や地下水の汚染が深刻になっている。このため汚染土壌の修復において,これまでにない高度でかつ安価な重金属分離・除去プロセスの開発が切望されている。 本研究では,汚染土壌からの重金属リーチング除去に,身近に豊富にありながらこれまであまり利用されることのなかった天然物を利用することを検討した。天然物としては、ミカン搾汁残さを水熱処理したものと、その基礎研究として主成分のペクチンを水熱処理したものを用いた。当初計画していた、クロレラ等微細藻類の細胞壁セルロースを水熱処理したものは、リーチング能力が小さかったので、本研究ではペクチンとミカン搾汁残さを中心に検討した。 ペクチンの水熱処理において、処理温度の上昇とともに、分子量が減少し、またエステルが加水分解されカルボキシル基が生成することを確認した。種々の温度(130℃〜220℃)でペクチンを水熱処理したもののリーチング能力を、重金属汚染土壌標準物を用いて検討したが、175℃で処理したものが最も高い能力を示し、バイオキレート剤として効果的に作用することがわかった。カルボキシル基をもつ多糖類であるアルギン酸を水熱処理したものも、同様のリーチング能力を示した。これらのリーチング能力は、石炭フライアッシュからのヒ素等のリーチングにおいても反映された。ペクチンを多く含むと考えられるミカン搾汁残さの水熱処理物も、ペクチン水熱処理物とほぼ同様のリーチング能力を示した。リーチング廃液中からヒ素等重金属の選択的回収法についても検討した。鹿児島県の未利用資源であるシラスから調製したアルミニウム担持シラスゼオライトが高い吸着能をもっており、効果的なヒ素回収剤となることを見出した。
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