研究概要 |
昨年度までの研究成果からポリ乳酸(PLA)にコロナ放電処理を施すと分解が一定期間抑制されるが、ポリカプロラクトン(PCL)とポリブチレンサクシネート・アジペートでは逆に分解が促進されることが明らかになっている。また、PCLとPBSAについても天然抗菌物質をコーティングすることで分解を一定期間抑制できることを明らかにした。本年度はこのような表面処理によるの分解促進または抑制が分解微生物とどのような関係にあるかについて下記の点に付いて明らかにした。 (1)分解微生物について コンポスト中に生息する各種微生物数とPCL, PBSAの重量低下傾向を比較してその相関性を調べたところ、重量低下が著しい時期に特異的に増殖する微生物が8種類生息することが分かった。そのうちBacillus属、Aspergillus属、Streptomyces属などが分解に関与していることがわかった。PCLとPBSAともに分解に関与している微生物はAspergillus属でありこの微生物が生産する酵素はPCL, PBSAに対して高い分解活性を示した。またPLAに対しても分解活性は低いものの分解能を有していた。そこで、これらの微生物のコロナ放電処理または抗菌処理試料表面への吸着性を検討した。 (2)分解微生物の試料表面への吸着性 コンポスト中に生息した一般細菌、放線菌、糸状菌から単離した微生物を液体培地中で培養し、そこにPCL、PLA、PBSAの処理未処理試料を浸漬させ、試料表面への微生物の吸着性を調べたところ、一般細菌、と放線菌に関してはコロナ処理、未処理、ともに殆ど吸着しなかったが、糸状菌はPCLとPBSAの処理表面上に強固に吸着し、未処理面には殆ど吸着しなかった。特に分解活性の高いAspergillus属の吸着が顕著であった。またPCL, PBSAにわさび抗菌成分をコーティングした場合にはAspergillus属は吸着しなかった。 このように生分解性プラスチックの分解をコントロールする際には分解微生物の試料表面への吸着性をコントロールすればよいことが明らかになり、本研究の目的である、使用中は分解せず使用後に速やかに分解する生分解性プラスチックの創成を達成することができた。
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