研究概要 |
近年,ビスフェノールAが環境水や食品から検出され,微量で内分泌撹乱作用を示すため,水環境や生態系への影響が懸念されている。したがって,高度水処理工程における環境ホルモン除去能を評価することは重要である。今回,表面改質炭素材料による低濃度ビスフェノールAの除去性能,さらに,綿繊維から炭素材料を製造し,そのノニルフェノール除去性能についても検討した。 ビスフェノールAの未処理炭素材料および還元処理炭素材料への吸着量は,酸化処理炭素材料への吸着量に比べ高値を示した。さらに,極低濃度領域(100ppb以下)における還元処理炭素材料へのビスフェノールAの吸着量は,未処理炭素材料への吸着量に比べ若干増大した。したがって,極低濃度領域におけるビスフェノールAに対する炭素材料の吸着性能は,表面疎水性の強さに依存することが判った。 一方,使用済み繊維のうち145万トンが毎年,埋立処理されているのが現状である。したがって,繊維のリサイクルという視点からも繊維由来炭素材料を開発する必要がある。綿繊維を900℃,60分間空気賦活した場合,炭素材料の比表面積および細孔容積は,窒素雰囲気下600℃で60分間炭化した炭素材料の値に比べて高値を示した。また,空気賦活炭素材料によるノニルフェノールの除去量を測定した結果,空気賦活炭素材料によるノニルフェノールの除去量は,綿由来水蒸気賦活炭素材料とほぼ同程度となり,環境ホルモン除去に有効である。 本研究の結果より,環境ホルモン除去特性は吸着剤表面の疎水性の強さに依存することより,綿繊維由来環境ホルモン除去用炭素材料を含む環境ホルモンの除去用炭素材料としては,還元処理炭素材料が有効であることが明らかになった。
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