平成14年度は、前年度の研究実績を踏まえて研究を進め、平成13年度に実施した天然色素含有植物材料の蘇枋の水溶媒抽出における常温静置の抽出法での無機酸、有機酸添加の場合の酸性領域における色彩についての結果をまとめた。また、天然色素含有動物材料のコチニールについて研究を行い、水溶媒抽出での常温静置の抽出法で添加剤としてアルカリ剤4種を用い、各々初期pHとなるように調整した溶液でコチニールを抽出した。紫外可視分光光度計を用いて各抽出液の吸収スペクトルを測定した結果、1日抽出で水のみの抽出よりも高い吸光度を示すのは炭酸ナトリウム、アンモニア及び水酸化カリウム添加の場合であり、水酸化ナトリウム添加の場合は抽出日数の増加と共に吸光度が高くなる傾向である。初期値pHについては、pHが高くなるとアンモニア添加では抽出日数と共に吸光度が低下し、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム添加でも高pHでは低い吸光度となり、コチニール色素の抽出量は少なくなることが認められた。また測色色差計を用いて色度を透過モードで測定し、L^*a^*b^*の値を求めた結果、初期値pHの低い塩基性領域では、水のみの抽出よりもL^*は低く、a^*b^*は比較的高い色相であるが、初期値pHの高い領域でのアンモニア添加の場合は抽出日数と共にL^*a^*b^*共に極めて低くなり、濃暗茶褐色のコチニール抽出液に変化することが認められた。天然色素含有動物材料のコチールについて高速液体クロマトグラフィーを用いるための分析条件を探索し、移動相の使用液種と混合比率を検討した結果、移動相はアセトニトリルと0.5%リン酸溶液を1:4の比率で混合した場合にShim-pack VP-ODS(150mm-4.6mm)カラム、温度40℃で比較的良好な分離クロマトグラムが得られ、アンモニア添加の高pH抽出液の分析ではコチニール主成分のカルミン酸に相当するピークは極めて小さく、他物質のピークが認められた。
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