色素を含む天然物材料から天然色素を可能なかぎり多く抽出できる方法について、省資源化、省エネルギー化環境保全の観点から検討し、その色素抽出法の確立とその色素抽出液中に存在する色素成分について知ることを目的として本研究を行った。天然色素含有植物材料の中から水溶媒で抽出可能なものとしてインド茜と蘇枋について常温静置の状態で各4種の無機酸、有機カルボン酸及びアルカリ剤の計12種の添加剤を用いてそれぞれの濃度での初期pH値となるようにした溶液で抽出した。インド茜抽出液及び蘇枋抽出液共に同様な挙動を示した。即ち、紫外可視分光光度計による高い吸光度が得られたのは、塩基性領域では、アンモニア添加による初期値pH12.0の場合であり。酸性領域では、プロパン酸添加又はn-ブタン酸添加による初期値pH2.0の場合であった。PHの変化は、抽出日数ごとに測定し、抽出初期のpHは、中性に近い塩基性領域では大きく低下し、酸性領域では上昇した。最大波長については、アンモニア添加において、初期値pHが高くなると長波長側へと移行する傾向が認められた。色差計による色度については、アンモニア添加では、初期値pHが高くなるほど濃色暗色となり、酸性領域においては淡黄色であるが、n-ブタン酸添加による初期値pH2.0ではより濃色の黄色であった。天然色素含有動物材料として水溶媒で抽出可能なコチニールについて常温静置状態で、インド茜や蘇枋の場合と同様に12種の添加剤を用いて抽出した。酸性領域での抽出は有効的であり、リン酸、プロパン酸、n-ブタン酸添加による初期値pH2.0では、高い吸光度と長期保存可能性を示した。しかし、アンモニア添加では、初期pH値が高くなると抽出日数と共に吸光度は低下し、色度もL^*a^*b^*共に極めて低く、高速液体クロマトグラフィーによる分析においても、コチニール色素主成分のカルミン酸以外の物質の成分が示唆された。
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