研究概要 |
風蓮湿原においてチャミズゴケハンモック(Sphagnum fuscum)の水文気象環境の調査を実施した。また、4個所の湿原において約1ヶ月間隔で、Sph.fuscum(風蓮)、Sph.pillosum(風蓮、歌才)、Sph.subfulvum(風蓮、キウシツ、ウトナイ)の伸長量を測定した。 ハンモック表面からの実蒸発散量は、可能蒸発散量と同程度であった。ハンモックの含水率は、下層では水位変化に対応して変化していたが,表層では,降雨によって上昇し降雨後に降雨前の値まで低下した。また晴天時には日中に含水率が低下し、夜間に上昇するという日変化を繰り返したため,1日あたりの含水率の低下量は非常に小さかった。水収支法による解析の結果、ハンモック内部では日中に上向きの水移動があり、表層の流量が下層の流量より大きく、流量のピークは表層ほど早く現れる傾向がみられた。これらの結果から、次のことが推察される。降雨時はハンモック表層に供給された雨水はすぐに下方に浸透する。晴天時は蒸発散によって表層の水ポテンシャルが低下し,その低下分を補うように下層に貯留されている水が表層へ供給される。 ミズゴケの伸長量は、Sph.papillosum、S.subfulvum、Sph.fuscumの順に大きかった。伸長量と水文気象環境との関係について次のことがわかった:(1)Sph.papillosumは気温が高く正味放射量の大きい6-8月に伸長量が最大で、水位が低下した時期でも抑制されない,(2)Sph.subfulvumは、5-6月において伸長量が最大であり、降水量が少なかった6-7月に伸長量が小さかった,(3)Sph.fuscumは気温が高い7-8月に伸長量が最大で、水位が低下した6月においても伸長はあまり抑制されない。年変動の大きい水文気象環境とミズゴケハンモックの形状との関係を明らかにするためには、さらにデータの経年蓄積が必要である。
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