研究分担者 |
平野 高司 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20208838)
倉持 寛太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00225252)
浦野 慎一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (40096780)
植村 滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (80250497)
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研究概要 |
北海道内のミズゴケハンモックの形状に地域的差異が生じる原因を解明するため,ハンモックの高さが異なる4湿原(風蓮川:円筒形で高い,サロベツ・歌才:扁平で低い,ウトナイ:山形で中程度)においてミズゴケ3種のシュートの成長量を測定した.さらに,冬期の電圧と他の植物の有無が成長に与える影響も検討した.年間成長量は日本海側で太平洋側を上回った.他の植物の除去によってミズゴケの成長が抑制された.これは被陰による蒸発抑制効果が失われたためと考えられる.雪圧を除去した場合,多雪地帯で成長が抑制されたのは,冬期の雪圧によってハンモックが沈降せず,相対的に水位が低くなったためと推察された.サロベツでイボミズゴケの成長が6月に抑制されたのは,余剰降水量の低下による乾燥が原因と考えられる. 風蓮川湿原のハンモックの水収支を調査し,ハンモック内の水移動を検討した.晴天日は日中に蒸発散によって失われたのと同量の水が下層から供給されていた.降雨中は,ハンモック表面から供給された雨水が表層で貯留されず浸透し,深層では一部が貯留された.表層の未分解泥炭は徴密な構造をしており,毛管水の保持・吸収能力が高い.そのため,蒸発散によって表層の水が失われても深層から吸引できたと考えられる.一方,深層の分解泥炭は構造が崩壊し透水性が低いため,降雨時には水移動量が表層より小さくなり,水が深層に貯留されたと考えられる.このように,降雨時に雨水が深層に蓄えられ,その水が晴天日に表層へ供給され,ハンモックが雨水涵養性の水質となったと推察された.また,この地域では夏季に頻繁に降雨があり,降水量が蒸発散量を上回る.したがって泥炭の特性と同様に気候条件もハンモックの形成・維持に影響したといえる.ハンモックがミズゴケの枯死体から形成されているから,ミズゴケはハンモックを形成することでそれ自身の生育に適した環境を形成することが示唆された.
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