ファルネシル二リン酸(FPP)合成酵素(FPS)はジメチルアリル二リン酸(DMAPP)とイソペンテニル二リン酸(IPP)2分子から、ゲラニル二リン酸(GPP)を経てスクワレン、ドリコールやプレニル蛋白の前駆体である炭素15個のFPPを与える反応を触媒する。 報告者は中等度好熱性細菌Bacillusu stearothemophilusより遺伝子工学的に得られるFPP合成酵素の81位のチロシン(Y)をセリン(S)、アスパラギン酸(D)、アルギニン(R)に換えた変異酵素を3種調製し、各酵素の基質特異性を基質アナログを用いて検討した。 野生型酵素ではほとんど受け入れない側鎖に酸素原子を持つアナログを今回検討の各変異酵素は容易に受け入れることが分かった。また、その反応性も天然基質をはるかに越す結果を示した。一方、側鎖に疎水性基を持つアナログは野性型に比べ反応性の低下が見られた。Y81Sはエーテル酸素原子を持つGPPアナログに高い反応性を示した。また、Y81Rは保護基のない水酸基を持つGPPに高い反応性を示した。これらのことは一個のアミノ酸の置換でFPSの機能改変が達成された事を示唆する結果である。 現在、これら変異酵素を用いて昆虫の幼若ホルモンJHIIIの合成への応用を検討している。なお、これらの結果は天然有機化合物討論会(2000年・11月)・生体触媒化学討論会(2001年・1月)等で報告され、現在、投稿準備中である。
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