プレニル二リン酸合成酵素はイソプレノイドの生合成に重要な鍵となる酵素である。これらイソプレノイドの多くは生体の反応で重要な役割を持つ。二つの基質を縮合し、新しい炭素-炭素結合を形成する反応を触媒する事から有機合成化学からも大変興味がもたれる酵素である。 ブタやトリの肝臓からのファルネシル二リン酸合成酵素(FPS)を利用した生理活性物質の合成例が報告されているが、これらの酵素は熱不安定という欠点を持つ。一方、Bacillus stearothermophilusからのFPSは熱に安定だが、基質特異性が幾分厳しい。鎖長決定に深く関与しているとされる81位のチロシンを親水性側鎖を持つアミノ酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリンに置換した変異酵素を調製し、基質アナログを用いて、各酵素の基質特異性を検討した。野生型でほとんど受け入れない酸素原子を持つ基質アナログを変異酵素は大変よく受け入れる事が分かった。酸素原子の位置、数などで各変異酵素の特異性が変わることが分かった。酸素原子を持つ官能基は有機合成上重要な鍵官能基であることから、今回検討の変異酵素はより有機合成に有用なものとなったといえる。一個のアミノ酸を換えることにより、基質特異性が大きく変わることから、変異導入より本酵素の機能改変がうまくなされたといえる。
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