研究概要 |
1.昨年度までの研究によって,純粋分離したカテキンを,茶葉発酵を模した条件で酸化することで,数種の新規代謝産物の分離し構造決定することが出来た。それらの化学構造が明らかになったことで,酸化過程でキノン中間体の存在が予想された。しかし,キノン自体は不安定なためか,直接分析することが出来なかった。そこで,キノンをトラップする試薬を用いて、発酵過程の茶葉から実際にキノンの誘導体を分離することに成功し,カテキンがキノンとなった後,二量体として存在していることがはじめて明らかになった。 2.発酵過程では二量体キノンがかなりの量蓄積されるのに対して,製品となった紅茶にはキノンは存在しない。このことは二量体キノンがどのように変化しているのかを明らかにすることが,これまで構造不明であった紅茶色素テアルビジンの構造を明らかにする上で重要であることを示唆しており,14年度はこれについて重点的に研究を行う。 3.茶発酵時のカテキン酸化は複雑であるが,純粋なカテキンをバナナで処理すると類似の酸化を再現可能で,しかも生成物組成が茶葉に比べて単純であることを見出した。この系を用いて酸化実験を繰り返し,キノントラップ剤等を駆使することによって,酸化酵素がまずカテコール型カテキンをキノンに酸化し,次に生成したキノンがピロガロール型カテキンや紅茶色素テアフラビンを酸化するメカニズムの存在を確立した。 4.茶葉ではカテコール型とピロガロール型カテキンが共存することで特徴的な酸化反応が起こっている。そこで,同様な部分構造を持つカテキン以外の植物成分で酸化実験を行った。その結果,植物界にこれまで存在しない新しい色素を,全く化学薬品を用ない酵素的手法で合成することに成功した。これは,今後新たな機能性色素合成につながる成果と考えている。また,テアフラビンの大量製造法の開発にも着手した。
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