オキシドスクアレン閉環酵素(OSC)酵素反応の基質として用いるトリチウム標識化合物を、文献記載の方法に従い化学的に合成し、酵素アッセイ系を確立した。次に、ステロイド系抗生物質ヘルボール酸を産生するカビCepharosporium caerulensよりプロトステロール合成酵素活性の存在を確認の後、本酵素遺伝子のクローニングを試みた。まず、培養2日目の菌体より抽出したRNAを鋳型として、既知のOSCにおいて保存されている配列をもとにデザインした縮重入りプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ約1kbpの、さらに、5'-及び3'-RACE法により、約2kbpからなるcDNA全長配列を得た。ORFがコードする761個のアミノ酸からなる配列は、ラット(284/761)及び酵母(279/761)由来のラノステロール合成酵素と各々約37%の相同性を示した。このクローンの機能解析を行うべく、OSCを欠損した酵母変異株に組み換え酵素を発現させてその酵素活性を検討したところ、プロトステロール合成酵素とは微妙に異なる閉環反応を触媒するラノステロール合成酵素であることが判明した。現在、引き続きOSCの構造機能相関の解明をめざし、本クローンについて数種の部位特異的突然変異酵素を作成してその機能解析を進める一方で、プロトステロール合成酵素のクローンを得るために新たにcDNAライブラリーの構築を行っている。
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