研究概要 |
1.ステロイド系抗生物質ヘルボール酸を産生するカビCepharosporium caerulensよりクローニングに成功したオキシドスクアレン閉環酵素(OSC)の構造機能相関の検討。本クローンにおいては、OSC酵素の活性部位を構成するとされるアミノ酸残基H146,H234,T384,V454,D456(酵母LSにおけるナンバリング)が保存されていた。このうち、プロトステロールカチオンの安定化に寄与すると提唱されているH234とD456に着目し、部位特異的変異酵素を作成して、Coreyらが酵母OSCに関して報告している変異実験の追試を行った。即ちH234については芳香族アミノ酸のW, F, YやA, E, K, R, N, Q, C, S, T, M置換体を、また、D456についてはE, N, H置換の、以上計16種のポイントミュータントを作成して、酵素活性に及ぼす影響について検討した。その結果、H234をW, K, Nに置換したものに関してはラノステロール合成酵素活性が認められたが、それ以外の変異酵素の活性は完全に消失した。また今回新たに我々は、それぞれの変異酵素における酵素反応生成物についても検討したが、ラノステロール以外の生成物は検出されなかった。 2.本カビCephalosporium caerulensよりプロトステロール合成酵素の単離・精製を試みた。本酵素は、これまでに報告のあるOSCとは異なり、可溶性画分に活性が回収され、また、活性の発現に界面活性剤の添加を必要としなかった。硫安分画、陰イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイト、等電点電気泳動、高速ゲル濾過などの分画手段を組み合わせることにより、完全精製の試みが進行中である。
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