研究概要 |
1)我々は、覚醒物質レスペデジン酸カリウムを基盤とした蛍光プローブ化合物を化学合成した。蛍光補助基として、分子サイズの小さなNBD,AMCA,coumaryl基を結合させたプローブ化合物は、天然物の1/10〜1/5と、天然物にほぼ匹敵する活性を示した。現在、蛍光顕微鏡を用いて、これらプローブ化合物と植物組織との結合の観察について検討している。 2)我々は、化学合成した人工覚醒物質を用いて、植物の就眠運動を阻害することに成功した。そこで、水分蒸散の機構を調べるために、就眠物質により閉じた葉と覚醒物質により開いた葉を用いて、一日の気孔の運動を観察した。その結果、気孔は、葉の開閉と無関係に、昼間は開き、夜には閉じるといった通常通りの開閉運動を行っていることが分かった。これらの結果より、マメ科植物は、就眠運動を行うことで、葉表面のクチクラ層からの水分蒸散を制御しているものと推定された。 3)マメ科植物のギンネムは、小笠原・沖縄地方に分布するマメ科の外来植物であり、他の植物を駆逐して、地域の生態系を乱すことから問題になっている。我々は、葉を開かせる覚醒物質を用いて目的植物のみの就眠運動を阻害し、水分欠乏を誘導して枯死させることで、ギンネムを選択的に除草剤できるのではないかと考えた。そこで、ギンネムの活性物質の単離・構造決定を行い、就眠物質としてPotassium 2,3,4-trihydroxy-2-methylbutanoateを得た。また、抽出液中には覚醒物質による活性も確認されており、現在精製を進めている。
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