1.筋小胞体カルシウムポンプの第7、8膜貫通ヘリックス間内腔ループに存在するCys876とCys888の機能を調べた。兎骨格筋から単離した本酵素をペプシン消化し、ジスルフィド結合を含むペプチドを精製し、上記Cys間にジスルフィド結合が形成されていることを示した。本酵素の変異体C876A、C888A、C876A/C888AはいずれもCa^<2+>輸送機能を完全に失っていたが、ATPase触媒過程は野生型に比べて異常はなかった。これらの結果から、このジスルフィド結合がATP加水分解とCa^<2+>輸送の共役に重要な高次構造を安定化することを示唆した。 2.本酵素の細胞質ドメインはリン酸化ドメイン(P)、ヌクレオチド結合ドメイン(N)、細胞質小ドメイン(A)より構成されるが、触媒過程でこれらの3ドメインの集合状態変化を調べた。ProteinaseK(prtK)とV8によるAドメイン-膜ドメイン連結ループの(A-膜ループ)切断、trypsinによるAドメインの切断に対する抵抗性を解析した。その結果から、Arp結合E1(E1/ATP))およびADP感受性リン酸化酵素(E1P)でP、N、A-膜ループが集合し、Ca^<2+>輸送stepであるE1PからADP非唇受性リン酸化酵素(E2P)への異性化によって3ドメインが最もコンパクトな構造になることを示唆した。 3.可溶化した筋小胞体カルシウムポンプはCa^<2+>無しで迅速に変性することから、Ca^<2+>非結合酵素の結晶解析などが困難であった。一方、Mg^<2+>とフッ素は本酵素に固く結合してE2Pのアナログとなる。そこでkg^<2+>/F^-結合型と、非結合型酵素を可溶化後、親和性カラムで精製し、4℃にてCa^<2+>無しでの可溶化安定性を調べた。Mg^<2+>/F^-非結合型酵素は5日の半減期で活性が消失するが、Mg^<2+>/F^-結合型酵素は20日以上活性は完全に保たれることを示した。
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