申請者らは、グリコサミノグリカン(GAG)糖鎖を合成する生化学的アプローチとして、精巣性ヒアルロニダーゼ(Hyase、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ)の糖転移活性を利用した。即ち、Hyaseはヒアルロン酸(HA)の非還元末端二糖(GlcA-GlcNAc)を加水分解し、直ちにその二糖を他のHAの非還元末端に転移させる糖転移活性がある。そこで、本年度はGAGを構成する繰り返し二糖の一つであるウロン酸(グルクロン酸(GlcA)とイズロン酸(IdoA))に関して、自由に配置した人工GAG、即ち、デルマタン硫酸(DS)の合成を試みた。その結果、精巣性ヒアルロニダーゼの反応機構において、次のような新しい知見が得られた。一つは、本酵素は硫酸基を持っていないGalNAc-IdoA結合は加水分解するということである。もう一つは、本酵素の糖転移反応において、IdoA一GalNAcユニットを、非還元末端にGlcAを持つ他のオリゴ糖へ転移させれること。また、それとは逆に非還元末端にIdoAを持つオリゴ糖への転移も可能であることも明らかになった。従って、構成糖としてGalNAc、GlcA、IdoAを持つGAG、即ち、DSの人工合成は、このシステムを利用することにより、可能となった。しかし、最終的なDSのデザイン化のためにはこのように合成された糖鎖のIdoA-GalNAc部分への硫酸基の導入(回復)することが今後の重要な課題である。
|