研究概要 |
グリコサミノグリカン(GAG)は血液凝固阻止活性や抗血栓活性のように生理的機能に関与する多くのドメイン構造を有することが知られている。そのような部分の構造と機能との関係を明らかにするためには、検索用モデルとして多くのGAGオリゴ糖を準備することが重要である。本研究においては、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼである精巣性ヒアルロニダーゼの糖転移活性を利用したコンドロイチン硫酸オリゴ糖の合成を開発した。糖転移反応の供与体、あるいは受容体として、コンドロイチン(Ch)、コンドロイチン4-硫酸(Ch4S)、コンドロイチン6-硫酸(Ch6S)、その他のGAGの組み合わせを変えて反応させると、糖鎖の組み換えが起こる。そこで、この組み合わせをコントロールすることにより、注文通りの糖鎖配列を持ったオリゴ糖の合成が可能となった。その結果、天然に存在しないようなキメラ型GAGを含めた多くのコンドロイチン硫酸オリゴ糖ライブラリーを作製することができた。 組み換え技術により作製されたオリゴ糖ライブラリーを元に、次のような応用的研究も行った。 我々は、コンドロイチン硫酸E(ChS-E)がV型コラーゲンに対して特異的親和性を有することを見いだした。ChS-Eを精巣性ヒアルロニダーゼの加水分解反応で消化し、糖鎖組み換えによって得られたオリゴ糖に新たに糖残基を結合させて、特定の構造配列を有する糖鎖を合成し、そのChS-E側の特異的親和性の必須構造を調べた。その結果、オリゴ糖の非還元末端に存在するGlcAβ1-3GalNAc(4S,6S)構造が重要であることが知られた。 このようにオリゴ糖ライブラリーは、将来の糖鎖工学における新しい研究展開に寄与するものと期待する。
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