研究概要 |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は,2つのα-アミラーゼ(TVA1,TVA2)を持つ。これらは,デンプンに加えて,通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)やα-1,4,α-1,4,α-1,6が規則正しく繰り返す多糖であるプルランも分解できるという興味深い基質特異性を持つ。これらの酵素の基質認識機構を解明するために,以下の研究・発表を行った。(1)TVA2がどのように基質を認識するかを明らかにするために,不活性型ミュータント酵素E354AおよびD325Nと基質との複合体のX線構造解析を行った。E354A/β-CD(3.0Å分解能),D325N/メチルβ-CD(3.5Å),D325N/マルトヘキサオース(3.5Å)の3種類の構造を決定することができ,Phe286がβ-CDを認識するのに極めて重要な役割を果たしていること,マルトヘキサオースは,CDとは,異なった配向で酵素に結合しているがわかった。さらに,TVA2のβ-CD認識機構を明らかにするため,Phe286を他の疎水性アミノ酸(Ala, Leu, Tyr, Trp)に置換したミュータント酵素を合成,反応動力学パラメータを測定し,X線構造からの知見を支持する実験データを得た。(2)Domain Nの役割を解明するため,Domain Nを削除したミュータント酵素を合成し,酵素活性が著しく低下することを見出した。(3)TVA2とアイソザイムであるTVA1について,1.6Å分解能で構造を決定した。TVA1も,TVA2同様,通常のα-アミラーゼと異なり,N末側にDomain Nを持っていたが,その配向は異なっていた。TVA2においては,Domain Nがダイマー形成に関わっているのに対し,TVA1においては,酵素全体の構造安定性に大きく関わっていることが解明された。
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