真核細胞の転写制御に幅広く関わるhigh mobility group(HMG)蛋白質の複数のものを対象として、それぞれの構造機能解析を行なった。対象とした蛋白質とその研究成果を以下にまとめる。 1)ヌクレオソーム結合蛋白質HMG-14およびHMG-17と再構成ヌクレオソームとの相互作用解析:HeLa由来のヒストン遺伝子を大腸菌で発現させえた組み換えヒストンをもちいて再構成ヌクレオソームの調製技術を確立した。HMG-14およびHMG-17がヌクレオソームに結合することにより誘導されるヌクレオソーム上のDNA構造変化をCDにより解析した。その結果、HMG-14およびHMG-17がヌクレオソームに結合することにより誘導されるDNA構造変形には、わずかながら有意な差が認められた。この結果から、HMG-14およびHMG-17がヌクレオソームにそれぞれ特異な立体構造変形を誘導することで、排他的な穂もダイマー形成を可能にしていると考えら得る。 2)エンハンスソーム形成因子であるHMG-IとエンハンサーDNAとの相互作用解析:HMG-Iが持つ3つのAT-hookモチーフのうちC末端側の2つのモチーフを持つ蛋白質の大量発現系を構築し、PRDII-NRDI結合配列を持つDNAとの相互作用解析を行なった。NMR解析の結果、HMG-IのC末端側の2つの結合モチーフはそれぞれ特異的にPRDIIおよびNRDI配列に結合しているわけではなく、2つの結合モチーフがそれぞれの結合配列のいずれにも結合でき、かつNMR測定中には、その2つの結合モードが交互に入れ替わっていることが示唆された。細胞中ではHMG-IはエンハンサーDNA上の特定の場所に結合するが、それには他の蛋白質間相互作用の関与の可能性がある。 3)ヌクレオソーム構造形成におけるDNAシャペロン蛋白質としてHMG2の構造機能解析:HMG2の2つのDNA結合ドメインの立体構造決定を行った。また、HMG2中の2つのHMG-boxは、DNAの超高次構造変形を誘導するために必要であるこをCD観測から示した。
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