我々は、tRNA前駆体のスプライシングに必須なtRNAエンドヌクレアーゼ(Sen複合体)が、酵母細胞ではミトコンドリアに局在化するシグナルを持つことを明らかにし、tRNAのスプライシングの一部が細胞質で進行する可能性を指摘してきた。本研究は、その生理的意義について検討することを目的としている。酵母を用いた分子遺伝学・細胞生物学的な解析から、本研究を通じて我々は以下のようなことを明らかにした。 1)野生型酵母株において、tRNAエンドヌクレアーゼサブユニットであるSen2p、Sen54p、および、その活性がミトコンドリア外膜の表在性膜タンパク質であることを明らかにした。 2)Sen2pのts株を3つとcs株を一つ単離し、これらが、in vivo・in vitro両面でtRNAのsplicingに欠損を示すこと、invivoで細胞質に前駆体tRNAを蓄積することを明らかにした。 2)Sen54pのミトコンドリア局在化シグナルの部分欠失変異が温度感受性の生育を示し、制限温度下で前駆体tRNAを蓄積することを示し、ミトコンドリア局在化シグナルがその機能に必要であることを明らかにした。さらに、細胞分裂時のミトコンドリアの分配に欠損niyotteミトコンドリアを持たない細胞を生じるmmml変異が、tRNAのsplicingにも欠損を示すことを明らかにした。 3)Sen54pは、そのN末端にTom70pのN末端領域を融合することでミトコンドリア外膜の内在性膜タンパク質として固定しても完全に機能するが、核移行シグナルを融合すると機能が損なわれることを明らかにした。 以上の結果は、Sen複合体がミトコンドリア外膜上で機能すること、また、核内では機能できないこと、さらに、前駆体tRNAは核を出てそこまで輸送されることを示している。
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