最近、LuuらがNatureに発表した論文によりインヒビター説が有力になったが、シグナル伝達に基づくレセプター説である可能性も残されているため、広範な視点から花粉側S遺伝子産物の探索を行った。 花粉(管)の細胞質可溶性蛋白質、膜蛋白質に対して、S-RNaseをリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーを行い、S-RNaseと特異的に結合する3種類の花粉管膜蛋白質(M.W.約70kD)を検出した。これらの蛋白質は、RNase T_2とは相互作用せず、花粉と比べて花粉管の細胞膜画分により多く発現していた。これらの蛋白質を2次元電気泳動で精製し、トリプシンによるin gel消化後、ペプチド・マスフィンガープリントを作製し、データベースで検索したところ、3種類ともレセプター型プロテインキナーゼとの相同性が示唆された。現在、MS/MSシーケンシングによりこれらの蛋白質の内部アミノ酸配列の決定を試みている。内部アミノ酸配列の情報が得られれば、PCRにより遺伝子を増幅し、塩基配列から予測されるアミノ酸配列がS遺伝子型特異的であるかを調べる。また、S-RNaseに対する結合もS遺伝子型特異的であるかを慎重に検討している。 さらに、表面プラスモン共鳴を原理にしたIAsysにより、in vitroでの花粉管伸長時に花粉管から培地に分泌される成分にもS-RNaseと結合する因子(M.W.約15kD)が存在することを見い出し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。現在、この因子と自家不和合性との関連性を検討している。
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