ペルオキシソームは真核細胞生物に広く存在する細胞小器官である。ペルオキシソーム欠損細胞を用いた遺伝子相補クローニングにより、少なくとも23のペルオキシソーム形成に必要な遺伝子(PEX)がクローニングされてきた。しかし、多くの詳細な機能は未知である。多くのペルオキシソーム欠損細胞には、ペルオキシソーム膜タンパク質は存在するが、マトリックスタンパク質が内部に存在しないゴーストと呼ばれる膜構造が認められる。AAAfamily ATPasesに属するPEX6を欠損したCHO細胞(ZP92)には、電顕による観察により、2種類の摸からなる"complex membrane structure"が認められた。これは、一枚の膜に囲まれたボール状構造が、二層からなる狭いルーメンを持ったdouble membraned loopに取り囲まれており、最外層にERを伴っていた。ZP92にPEX6 cDNAを導入した際の、ペルオキシソーム形成の初期過程において、double membraned loopの内部にのみ局所的なカタラーゼの蓄積が認められた。35Sを用いた標識実験により、相補過程において、complex membrane structureからペルオキシソームが形成されることを明らかにした。この結果は、ペルオキシソームゴーストは複雑な膜構造であり、PEX6による相補により、ゴーストがペルオキシソームに転換することを示している。
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