研究概要 |
好中球は造血細胞から分化・成熟した細胞であり、その分化成熟過程で、細胞膜表面に様々なスフィンゴ糖脂質を発現する。スフィンゴ糖脂質は細胞膜上でmicrodomainと呼ばれるクラスターを形成しており、その中にはスフィンゴ糖脂質を介してシグナルを細胞に伝える構造体(glycosignaling domain)が含まれている。中性のスフィンゴ糖脂質であるラクトシルセラミド(LacCer, CDw17)は、成熟した好中球や単球・マクロファージの細胞膜上に発現しており、様々な細菌に結合したり、好中球の活性酸素産生に関与すると考えられているが、その詳細は不明であった。そこで、本研究では好中球におけるLacCerのglycosignaling domainの構造と機能を明らかとすることで、LacCerを介した好中球の機能発現機構を明らかにすることを目的としている。 今年度は、 1)好中球のLacCerに富むglycosignaling domainを介した好中球の活性化には、Srcファミリー分子であるLynやp38 MAPKの活性化だけではなく、PI3 kinaseやprotein kinase Cの活性化が関与している、 2)LacCerに富むGSDにはコレステロールが含まれており、コレステロールを取り除くことで、LacCerを介したLynの活性化が著名に亢進することから、LacCerに富むglycosignaling domainを介した情報伝達は、コレステロールによって抑制的に調節されている、 等が明らかとなった。昨年度に明らかとなったこととあわせると、好中球はLynと会合したLacCerのglycosignaling domainを細胞膜表面に形成していて、リガンドがLacCerに結合することで、glycosignaling domainでLynが活性化され、さらに細胞内のPI3 kinase、p38 MAPK、protein kinase Cが関与するカスケードを活性化することで、好中球は活性酸素を産生すると考えられた。
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