線虫糖鎖の系統的グリコーム解析とガレクチンファミリーの内在性リガンド

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12680617
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 平林 淳 帝京大学, 薬学部, 講師 (40156691)
• キーワード: グライコーム / C.elegans / レクチン / アフィニティ

研究概要

モデル生物C.elegansを題材としたグライコーム解析は順調に第1段階を迎えた。本解析の成否は当該研究者らが開発した2つの基盤技術が実践レベルで十分機能するかどうかに大きく依存していたが、第1の基盤技術である「グライコキャッチ法」によって糖タンパク質をレクチンアフィニティー精製し系統的に遺伝子同定する作業は予想以上の成果を挙げている。本年度は、線虫の可溶性画分(分泌タンパク質)由来の分泌タンパク質から高マンノース型糖鎖をもつ糖タンパク質をConAアガロースを用いて、また複合型糖鎖をもつ糖タンパク質をガレクチンアガロースを用いて調製し、グライコキャッチ法により糖ペプチドの分離解析を進めているが、その成果からグライコキャッチ法の信頼性が確認できた。また、同定した遺伝子の約半数が既知タンパク質とのホモロジーを示したが、残り半数は機能未知の遺伝子に分類されているもので、後者遺伝子に対しては今後本解析が機能解明への道を開くものと期待される。第2の基盤技術であるフロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)はハード、ソフト双方での改善がなされ分析レベルではほぼ完成の域に達した。ガレクチンはじめ、各種糖結合タンパク質を用いた特異性解析作業が進展すれば、すでに有効性が認められている2Dマップ法などの物理化学的原理と併用し、糖鎖同定法への道が開ける。さらに、現在まで報告例のない線虫糖鎖の構造についてもN-結合型糖鎖についてはある程度の絞り込みがなされつつある。

研究成果

• [文献書誌] Hirabayashi,J. et al.: "Glycome project : concept, strategy and preliminary application to C.elegans."Proteomics. (in press). (2001)
• [文献書誌] Arata,Y.,Hirabayashi,J., et al: "Sugar binding properties of the two lectin domains of the tandem repeat-type galectin LFC-1(N32) of C.elegans."J.Biol.Chem.. 276. 3068-3077 (2001)
• [文献書誌] Arata,Y.,Hirabayashi,J., et al: "Application of reinforced frontal affinity chromatography and advanced processing procedure to the study of binding property…."J.Chromatogr.A. 905. 337-347 (2001)
• [文献書誌] Hirabayashi,J.,Arata.Y. et al.: "Reinforcement of frontal affinity Chromatography for effective analysis of lectin-oligosaccharide interactions"J.Chromatogr.A. 890. 261-271 (2000)
• [文献書誌] Arata,Y.,Sekiguchi,M. et al.: "Effcet of substitution of conserved amino acid residues on the sugar-binding property of the tandem-repeat 32-KDa galectin."Biol.Pharm.Bull.. 24. 14-18 (2001)
• [文献書誌] Hirabayashi,J & Kasai,K.: "Glycomics,Coming of age"Trends Glycoscience Glycotechnal.. 12. 1-5 (2000)