主要膜リン脂質の一種であるスフィンゴミエリン(SM)の生合成では、小胞体の細胞質表面で合成されたセラミドが、ゴルジ体の内側に移行してスフィンゴミエリン(SM)へと変換し、さらに細胞膜へと輸送される、報告者らは、昨年度までに、小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送のin vitro再構成系を樹立している。 セラミド輸送過程には、セラミドを認識する因子が関与しているという作業仮説を立て、本因子を競合阻害するようなセラミド構造類似体が存在する可能性を追求した。本年度は、化学合成した新規セラミド構造類似体群のなかから、セラミド-SM変換を阻害する化合物(HPA-12)を見いだし、本化合物が小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送過程を選択的に阻害することを無傷細胞およびin vitro再構成系を用いた解析から明らかにした。この発見は、上述した作業仮説を支持する。なお、HPA-12は、細胞内スフィンゴ脂質輸送を選択的に阻害する初めての薬剤である。
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