研究概要 |
シアル酸含有スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)は全ての動物細胞に発現される生理活性分子である。この分子の構造の多様性は良く理解されている。しかし、その機能に関し細胞増殖・分化、シグナル伝達、細胞接着などが想定されているが、その解析は未だ充分ではない。我々はガングリオシドの機能解析を目的として、従来その作製が困難とされていた特異抗体の作製法を開発し、一連の多数の抗体を樹立、その結合特異性を報告している。これら樹立された抗体の応用は生命科学や医学において多岐にわたる。本研究は抗体応用の一環として、ガングリオシド結合蛋白質の同定及びその機能解析を課題とした。平成12年度は、ガングリオシドGT1b結合蛋白質を抗体を用いた発現クローニング法により、brain-specific sodium-dependent inorganic phosphate cotransporter(BNPI)と同定した。平成13年度は、(1)BNPIのガングリオシドGT1bと詳細な結合部位の解析、(2)その他のガングリオシド結合蛋白質の同定を試みた。(1)に関しては未だ成功していない。この理由は、BNPI遺伝子導入細胞株の死滅による欠損蛋白質作製の困難さにある。BNPIの生理機能を考えるとこの実験手法は適当でない可能性がある、(2)に関しては、脳に発現されるGT1bを除くその他の主要なガングリオシドGM1,GD1a, GD1b, GQ1bの結合蛋白質を検索した。その結果、GD1aとGD1bの結合蛋白質が検出された。これらガングリオシド結合蛋白質は両分子とも巨大な分子量を持ち、ムチンの可能性が高い。現在、この分子の特定を進めている。今後、結合蛋白質の詳細な解析により、神経系におけるガングリオシドの機能解明の進展が期待される。
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