研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼによるヘム分解機構とピリペルジン還元酵素について次ぎの点が明らかになった. 1.病原性細菌Corynebacterium diphtheriaeのヘムオキシゲナーゼであるHmuOの蛋白化学的,酵素化学的性質は調べた限りに於ては,動物のHO-1やHO-2とほぼ同じであった. 2.Hmu OのHis20をAlaに換えたH20A変異酵素ではヘムを正常に配位はするものの,そのヘムの分解活性は消失していた.H20A・ヘム複合体の光吸収スペクトルやEPRなどの測定結果と野性型酵素・ヘム複合体の結果との比較からHis20がヘムの第五配位子として機能している事が知られた. 3.H20A酵素はイミダゾールを加えることでヘム分解活性は復活した.更に,H20A・ヘム複合体でもpHを酸性からアルカリ側に変化させると,第六配位子が水から水酸イオンに変化した.従って,H20A酵素ではヘムポケットの構造は正常であり,野性型と変わりがないと推測された. 4.ラットHO-1のArg183残基をGluやAspの酸性アミノ酸に換えた所,α型の他に一割程のδ型が生成した.酸性アミノ酸のカルポキシル基が生成物特異性を変化させたものと思われる. 5.ラットピリペルジン還元酵素の大腸菌での大量発現系とその精製系を確立した.精製酵素はラットの肝臓の酵素とほぼ同程度の活性をもっていた.結晶化にも成功し,その解析結果から,NADPHやNADHの結合部位を含む立体構造の全体像が明きらかになった,この発見は新生児黄疸の治療薬の開発などに繋がるものと期待される.基質であるピリペルジンを結合した結晶を得る事はできなかったが,現在,構造を基にして種々の変異酵素を作成し基質結合部位の特定を行っている.
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