研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼによるヘム分解機構とビリベルジン還元酵素について次ぎの点が明らかになった。 1.ラットHO-1を用いてヘム分解反応の第一段階、即ちヘミンからヒドロキシヘムへの酸素活性化機構にどのアミノ酸が関与しているかを検討した。基質であるヘムのαメテン炭素に近接すると考えられるアミノ酸残基をAlaに変異させた変異酵素、T135A,R136A,D140A,S142Aを大腸菌で発現させ、その大腸菌から精製した酵素を用いて種々実験を行った。これらの四つの変異酵素の内、D140Aを除く三種ではヘム分解活性は野生型と変わりがなかったが、D140Aでは野生型の半分程度の活性しか認められなかった。更に、過酸化水素との反応ではヘム分解反応は全く進行せず、いわゆるcompound IIの状態で停止した。D140E酵素ではこのような現象は見られないことからAsp140のカルボキシル基が酸素活性化にとって極めて重要という結論に達した。おそらく、このカルボキシル基が酸素活性化のための水素結合ネットワークの形成に与っていると思われる。 私共はこの段階での活性化酸素の分子種はハイドロパーオキシドと報告したが、今回、D140A酵素などを用いて更に明確にした。 2.ラットビリベルジン還元酵素の大腸菌での大量発現系とその精製系を確立し、更に、結晶化にも成功した。その解析結果から,NADPHやNADHの結合部位を含む立体構造の全体像を明らかにした.実際、その情報を基にして各種変異酵素を作成し、酵素活性を比較検討することにより、構造と機能との関連を明確にした。更に、基質であるビリベルジンの結合に関与すると思われる塩基性アミノ酸および電子伝達に関与すると思われるアミノ酸の特定にも成功した。
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