本研究は高度好熱菌Thermus thermophilus由来のV type ATP synthase/aseを用い、そのATP水解に伴う回転運動の解析と高次構造解析を通しV type ATPaseの作用機序を解明することが目的である。 1)回転の観察 現在、再現性のある回転運動は観察されていない。その原因の一つにADP inhibitionによるATPase活性の減衰がある。同様の現象はF-ATPaseでも観察されるが、ATP結合サイトにあるスレオニンをセリンに換えることにより抑制される。同様の変異をV-ATPaseの触媒サブユニットに導入したところほとんどADP inhibitionを受けなくなり、活性も上昇した。現在この変異導入したV-ATPaseを用いて回転観察を行っている。ホロ酵素におけるcサブユニットオリゴマーの回転をみるために、T.thermophilusを宿主としたホロ酵素の発現系を作成し、Aサブユニットへのhisタグの導入およびcサブユニットへのシステイン残基の導入が完了している。システイン残基へのビオチンの導入が終了しだい回転の観察を始める予定である。 2)高次構造解析 X線結晶高次構造解析を行うために、ホロ酵素、Vlドメイン、Voドメインの結晶化条件の検討を行っている。ホロ酵素に関しては、より純度の高い標品を得るためにT.thermophilusを宿主とした発現系を用い、ホロ酵素へのhisタグの導入を試み成功した。結果得られたホロ酵素はNi-NTAカラムで容易に高純度精製できるようになった。その結果それぞれに対する結晶を得ることができた。現在、よりよい反射を与える結晶を得るための結晶化条件の検討を行っている。
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